当センターでは ギャンブル依存症の方への外来治療を提供しています

ギャンブル依存症[1]は金銭的な問題を抱えてもギャンブルをやめられずに続けてしまう状態のことをいいます。ギャンブルについての制御が困難になるため、患者本人だけでなく家族や周囲の人間にも影響が大きい障害といえます。これまでの研究や臨床では、ギャンブル依存症の患者は常に過剰にリスクを好み、性格のように一定の傾向が見られるという考え方が主流でした。しかし、人は状況に応じてどの程度リスクを許容するかという判断を柔軟に切り替えて生活していることは明らかです。患者もまた多様にリスクへの態度を切り替えていると考えられるため、過去のモデルによる依存症の理解や治療には限界がありました。高橋 英彦 京都大学大学院医学研究科教授らの研究グループは状況に応じて最適なリスクの取り方を切り替える必要のあるギャンブル課題を考案し、患者のリスクへの態度に特徴がみられるかどうかを検討しました。実験の結果、患者は許容できるリスクの大きさを柔軟に切り替えることに障害があり、リスクを取る必要のない条件でも、不必要なリスクをとること確認しました。また、fMRIで患者の脳の活動状態を調べたところ、患者は脳の前頭葉の一部である背外側前頭前野[2]と内側前頭前野[3]の結合が弱いことも明らかにしました。

今回の研究を通して、ギャンブル依存症では状況を理解し柔軟にリスクに対する態度を切り替える能力に障害があることが分かりました。依存症の神経基盤を明らかにしたことで、多様なギャンブル依存症の病態の理解、新たな治療法開発につながるものと期待されます。

今後、ギャンブル依存症における柔軟なリスク態度の切り替えの障害を改善させるために、脳に直接、介入するニューロモデュレーション[4]の開発を目指します。また、柔軟に戦略や視点を切り替える障害は他の精神疾患でも障害が認められるため、柔軟性の向上を目指す方法の開発を目指します。

今回の研究により、ギャンブル依存症の病態の理解が深まり、また、リスク態度の柔軟な切り替えの障害を改善させる介入法の開発が期待されます。

この自助活動の例会参加を長期に続けると、安定し、回復につながります。実は、ギャンブル依存症を治療する医療機関は数少ないので、自助グループGAの活用が重要です。ギャンブルから離れ、生き方を変えながら健康に生きていくには、同じ問題を持つ仲間と定期的にグループミーティングを持ち、自分を内省する機会を長期に持ち続けることが最も大切なのです。

ギャンブル依存症とは、娯楽で始めたギャンブルが、既に自分に不利益、有害な結果を生じていて、やめたほうがよいと考えることはできても、強烈な再体験欲求(渇望)により、自己制御できずにギャンブルを反復継続する状態を言います。

スロットを連日打ってコインを大量に獲得しても換金できないわけですから、即時報酬は全く得られません。それではなぜその行為を繰り返すかというと、ギャンブル依存症から脱却するのが目的です。それはすぐに達成できるわけではないので、遅延報酬にあたるわけです。

ギャンブル依存症は、アルコール依存症や薬物依存症と同じ病気です。ご自身の意志や根性だけでは回復することは困難です。当センターでは、ギャンブル依存症の方への外来治療を提供しています。また、ギャンブル依存症専門治療プログラム「SWITCH」を2016年より開始しています。

ギャンブルは、何かの結果を予想して金銭を賭ける行為で、国や文化、世代により好まれる種目は多様です。わが国のギャンブル依存症には、パチンコ、スロットのゲームマシンが極めて多く、続いて競馬、マージャンで、ポーカーなどのカードゲームやバカラなどは少数です。

アルコール・薬物依存症では、渇望を抑制する薬物が開発途上にありますが、ギャンブル依存症では薬物の効果は確立していません。仮に薬物で渇望が抑えられるようになっても、ギャンブルのために虚言や偽装を繰り返してきたこと、ギャンブル最優先の自己中心的思考で家族の役割を放棄してきたこと、借金を肩代わりさせてきたこと、離婚や別居に至ったことなどの問題や、その反作用的な罪悪感、自責、自殺願望などの心理的問題は薬で解決しません。心理療法・精神療法で問題に向き合う必要があります。具体的には、アルコール依存症や薬物依存症で有効な集団(精神)療法、認知行動療法、内観療法などがギャンブル依存症にも効果があります。

連日、金にならないスロットを黙々と打つことで、脳をギャンブル依存症になる前の状態、即時報酬だけでなく遅延報酬を求める状態に戻すことが出来る可能性があるのです。

しかしギャンブルに夢中になりすぎて、家庭や学業、仕事に影響が出てしまっているのに、借金をして、周囲に嘘をついてまでギャンブルを続けてしまうことがあります。このような状況になることをギャンブル依存症(ギャンブル障害)といいます。ギャンブル依存症になると、苦痛を感じながら、自分を責められながら、大切な家族、友人の信頼を失いながらも、ギャンブルを続けてしまい、自分で止められなくなってしまいます。日本人の約5%が、一生のうちに一度はギャンブル依存症で苦しまれていることがわかっています。

また、他の家族の対応が参考になりますので、ギャンブル依存症の家族の集いである「ギャマノン」に参加してみましょう。この家族自身の自助グループであるギャマノンの例会場は全国に130ほどあり、インターネットで検索できます。

回復のための大事な点を箇条書きにしてみます。
1) 依存症を診療する医療機関か、精神保健福祉センターに相談に行く
まず恐れずに、専門家のアセスメントを受けてみましょう。ギャンブル依存症だから薬を飲むとか、直ちに入院するとかいうものではありません。問題の本質は何かを、専門家の力を借りて明らかにし、十分な説明を受けてください。
2) 全てを正直に明らかにする
この時点で全てをオープンにすること、特に債務は些細な額も正直に明らかにすることが再生の鍵です。借金の一切合切を明らかにし、司法書士や弁護士を活用して対策を進めると楽になるはずです。
3) 半信半疑でよいから回復プログラム(治療プログラムやGAミーティング)に参加してみる
問題なのは「ギャンブル依存症」なのですが、自分がそうとは中々受け容れられないものです。ギャンブルが病気?などと思うでしょう。半信半疑で良いから回復プログラムに参加して何が得られるのかを体験してください。特に、他の経験者や回復者が参加する集団のプログラムがお薦めです。
4) 1年ほどはギャンブルをやらないことにこだわり、プログラム参加をとにかく続ける
実際に参加すると精神的、身体的な調子も良くなり、「自分は軽い」「もう自分の力で治せる」などと考えて、プログラムや自助グループに行きたくなくなります。ギャンブル依存症の多くの人が、もう参加しなくてよい理由を探します。そこで早期にプログラムから離れた人は、問題が再燃しやすくなります。まずは、1年位を目標に参加を続けましょう。
5) 自助グループを活用する
3年後くらいに「治った」と考え、ギャンブルをしてしまうこと(「スリップ」と呼ぶ)があります。放置すると、すぐに再燃します。これを防ぐには、自助グループに参加し、自分のこころのうちを吐き出す習慣をもち、仲間と問題を分かち合うのが一番です。GAの仲間の体験が役に立ち、不要なスリップも避けることができます。
終わりに)
依存症はいつ爆発するか分からない休火山にも似ています。自然界の火山の爆発を防ぐのは困難ですが、自助グループに無理なく長期に参加することで“依存症火山”の爆発を予防し続けている人は世界中にたくさんいます。

公式病名は、世界保健機関(WHO)では「病的賭博」、米国での最新の診断基準の病名は「ギャンブル障害」です。また、アルコール・薬物依存症との同質性が分かり易いので「ギャンブル依存症」の病名も社会でよく使われます。

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