ギャンブル依存症の最も顕著な症状は借金と嘘である
当事者だけでなく、家族の暮らしと心も追い詰めていくギャンブル依存症。家族が、借金を肩代わりすることで、ギャンブル依存が悪化するケースは少なくありません。ここで、りこさんは、諦めることなく「介入」を続けます。
当院のギャンブル依存症回復プログラムに参加された患者さんのうち、治療を継続される方は約60%、ギャンブル問題が止まっている方は約50%です。
「自分や家族がギャンブル依存症かもしれないと感じたら、まず自助グループに行ってみましょう。また、一度行ってみたら『自分には合わない』と決めつけず、最低でも6回は通ってみることが大事です。ギャンブル依存症は、自分1人の力で回復を目指すことは難しいため、同じ問題を解決した人の力を借りながら、回復を目指していきましょう。また、ご自身が他のギャンブル依存症に苦しむ方を助けていくことも、回復につながります。Addiction(依存症)の反対語はConnection(つながり)と言われていて、人とのつながりや、助け合いがとても大切な役割を果たします。最初の頃は、回復できるという希望も自信も持てず、誰も信じられないかもしれません。けれども自助グループ等につながり続けていれば、回復の希望は必ず見えてきます。」
衝動を抑えられず、ギャンブルを続けてしまう精神疾患「ギャンブル依存症」。厚生労働省が2017年に発表した調査によると、ギャンブル依存症の疑いがある人は全国で推計320万人。しかし、どこに相談したらよいか分からず、孤立する当事者や家族が多くいます。
勧めたのは、ギャンブル依存症から抜け出したい人たちが共同生活を送り、一緒に回復を目指す施設。そこへ入ることを条件に、債務先への連絡を自分が行うとアドバイスしました。啓太さんは家族と相談の上、施設に入る日を連絡すると約束しました。
長年ギャンブル依存症の診療を行ってきた精神科医の佐藤拓さんによると、国内の医療機関などの対応にはまだばらつきがあり、明さん家族のように、相談しても受け皿がなく、当事者家族で問題を抱え込みがちになってしまうケースは珍しくないと言います。
また、佐藤さんはギャンブル依存症には、もう一つ難しい側面があると指摘します。
頻度はどうなのであろう。結論を先に示すと、我が国は世界に名だたるギャンブル大国です。2014年の厚生労働省の調査によるとギャンブル依存症の有病率は、男性8. 7%、女性1.8%、全体で4.8%(536万人)でした。アメリカが0.42%、イギリスが0.50%、香港が2.20%、マカオが1.80%。シンガポールが2.1 0%でありわが国のギャンブル依存症の有病率の高さは群を抜いている(厚労省はこの結 果をひた隠しにしている)。そして、遅まきながら、対策を立てるために、本年度になってからギャンブル依存症の合併症や治療法についての調査をやっと始めている。
2016年12月、カジノを含むIR・統合型リゾート施設の整備を推進する法律(IR推進法)が成立し、これまで日本では違法とされてきたカジノが法的に認められる可能性が出てきました。そんな中、今注目を集めているのが「ギャンブル依存症」の問題です。
しかし、病院は受け入れを拒否。その理由は、ギャンブル依存症はまだ医療関係者の間でも病気としての認知も低く、効果的な治療法も確立していないため提供できる診療がないからというものでした。
日本には、パチンコなどですでにギャンブル依存症になっている人が320万人いると言われています。その割合は、海外と比べて突出して高いと言われているにも関わらず、そもそも病気としての理解が十分進んでいません。
しかしギャンブルに夢中になりすぎて、家庭や学業、仕事に影響が出てしまっているのに、借金をして、周囲に嘘をついてまでギャンブルを続けてしまうことがあります。このような状況になることをギャンブル依存症(ギャンブル障害)といいます。ギャンブル依存症になると、苦痛を感じながら、自分を責められながら、大切な家族、友人の信頼を失いながらも、ギャンブルを続けてしまい、自分で止められなくなってしまいます。日本人の約5%が、一生のうちに一度はギャンブル依存症で苦しまれていることがわかっています。
ギャンブル依存症は、アルコール依存症や薬物依存症と同じ病気です。ご自身の意志や根性だけでは回復することは困難です。当センターでは、ギャンブル依存症の方への外来治療を提供しています。また、ギャンブル依存症専門治療プログラム「SWITCH」を2016年より開始しています。
田中:ギャンブル依存症っていう病気で、こういうふうになったのは分かるでしょ?もう自分ではやめられなかったこと。やめられないんだよ。
田中:だから、みんながもう、「自分たちに、できることはない。」って、腹くくったわけよ。で、君は?
啓太:もうなんか、いいです、分かりました。行くんで、ちょっとタバコ買ってきていいですか。
田中:じゃあ、一緒に行くから。
啓太:一緒に行かなくていい。1人にさせろよ。いきなり来て、話なんかできるわけないだろう。いいからもう、放っておけよ、行くんだから。行くって決めただろう! 話をして。
関東に暮らす小川明さん(30代・仮名)は、月に1度、支援者と共に長崎の精神科病院を訪ねています。明さんの弟の穣(みのる)さん(30代・仮名)が、ギャンブル依存症で今年8月に入院しました。
ギャンブル依存症の最も顕著な症状は借金と嘘である。また家族関係は混乱し破綻することも珍しいことではない。手元に少額のお金があれば(筆者の治療経験では500円でも)、ギャンブルをして何倍にでもできるという妄想的確信といえるような思考のもとギャンブルをする(お金=ギャンブル)。ギャンブルをすることが習慣となっているのであ.
る(病的習慣=嗜癖)。仕事よりギャンブルを優先し、仕事での信用を失うどころか、失職することもある。中にはホームレスとなることもある。生活保護受給者がパチンコにのめり込んでいることは珍しいことではない(彼らの生活保護を停止せよという声があったが、必要なのは治療であることは論を待たない)。学生の場合は、留年あるいは退学となることもある。多額の借金のため家族が肩代わりすると直ちにギャンブルを再開し、家族の貯金がなくなるまで肩代わりは続く。肩代わりしないと、家族や親族が悪いと攻撃してくることもある。子どもが進学をあきらめざるを得ないこともある(子供の将来・人生に 影響を及ぼす)。何度も裏切られた家族は何もかも信用できなくなり、混乱する。言葉が言葉としての機能を失ってしまうのである。バーンアウトし、家族関係が破綻することも珍しくない。
治療は、精神療法・集団療法が主となる。ギャンブルをとめ、思考、感情、行動、家族 関係を含めた人間関係を健康なものすることが目的となる。仕事を優先することは、有効 ではなく、お金=ギャンブルという思考のままでは、給料が入るとまたギャンブルをするだけである。治療を優先するべきである(覚せい剤依存症者が、お金=覚せい剤という思考のもとお金があると覚せい剤を入手し使用するのと全く同じである)。説教、説得、約束などで、ギャンブルが止められることはなく、全く意味がない(アルコール依存症者の飲酒や薬物依存症者の薬物使用が、説教、説得、約束などでやまらないのと同じである)。ギャンブルを止めることを約束させ、その約束を守れず、再びギャンブルをしてし まった場合、離婚にもっていく治療機関があると聞いているが、疾病特性を理解していな い判断である。ギャンブルからはなれ、安定した生活を取り戻すのに、少なくとも3年は必要という印象がある。残りの人生をかけてギャンブルと縁のない生活を取り戻すという考えがあり、その場合は一生涯かかることとなる。いずれにせよ、薄紙をはぐようにしかよくならない。家族関係の再構築も目標の一つであるが、やはり時間は必要で、言葉が言葉としての機能を取り戻し、信頼関係を取り戻すには少なくも3年は必要である。ギャンブラーズ・アノニマス(GA)という自助グループも有効である。
法的規制も重要であるが、有効な手立てがされていないのが現実である。パチンコ・スロットは遊技とされ行政はギャンブルとは認めていない。また、統括する機関は、パチン コ・スロット一警察、競馬一農水省、競艇一国交省、競輪・オートレース一経産省、宝くじ一総務省、スポーツくじ一文科省とバラバラであり、一貫したギャンブルに対する施策 はとられていない。カジノはどうなるのであろうか。